成果報告(若手教員研究基盤整備助成)
  助成金使用内訳書(PDF)
〔研究者〕
  有機・高分子物質専攻    足立 馨 (あだち かおる)
〔タイトル〕

両親媒性環状ブロック共重合体の選択的且つ効率的合成プロセス

〔研究の背景〕

環状高分子は非常にシンプルでありながら末端を持たない極めて特徴的な形を有しているため、その合成や特性に注目が集まっている。しかし環状高分子の研究は主に学術的な研究にとどまっており、機能化に向けた分子設計が課題となっている。環状高分子に様々な機能性高分子セグメントを導入し、高分子の形由来の特性とセグメント由来の特性を融合させた新しいコンセプトによる機能性環状高分子は、このような環状高分子の分野におけるブレイクスルーとなる。これまでに、原子移動ラジカル重合(ATRP)および分子内メタセシス縮合(RCM)を用い、高分子セグメントおよび官能基の影響を受けにくい環状高分子の新しい合成法を報告したが、機能性材料への展開はこれからの課題である。そこでこの手法を発展させ、疎水性セグメントおよび親水性セグメントがブロック的に環状につながった両親媒性環状ブロック共重合体について、その選択的かつ効率的合成プロセスを開発する。

〔結果と考察〕

本研究では、親水性セグメントにはポリエチレングリコール(PEO)を用い、疎水性セグメントとしてポリアクリル酸n-ブチルを用いた。目的とする両親媒性環状ブロック共重合体は、①PEOの末端修飾による高分子開始剤の合成、②高分子開始剤からアクリル酸n-ブチル(nBA)のATRPによるブロック共重合体の合成、③両末端アリル基の導入、④RCMによる環化反応の4ステップにより合成検討を行った。

①PEOの末端修飾による高分子開始剤の合成
 両末端水酸基型PEOに2-ブロモイソブチリルブロミドをエステル化反応させることで、両末端にATRP開始種を導入し、高分子開始剤を得た。1H-NMRスペクトルより末端基の導入が確認され、GPC測定から得られた高分子開始剤が狭い分子量分布を持つことが確認されたことより(Mp=1300, PDI=1.35)、目的とする高分子開始剤が得られたことを確認した。

②高分子開始剤からアクリル酸n-ブチル(nBA)のATRPによるブロック共重合体の合成
 合成した高分子開始剤を用い、臭化銅および4,4’-ジノニル-2,2’ビピリジン存在下、nBAモノマーをATRPにて重合することにより、ABA型両親媒性ブロック共重合体を得た。得られた共重合体は精製せずに次の反応に用いた。

③両末端アリル基の導入
 得られたブロック共重合体にアリルトリブチルすずを加え、加熱することにより、両末端にアリル基を導入した。得られたテレケリクスはアルミナカラムおよび冷メタノールへの再沈殿により精製した。1H-NMRスペクトルよりnBAの重合および、末端アリル基の導入が確認された。またGPC測定からピークトップ分子量Mp=7400、分子量分布PDI=1.21と求まった。

④RCMによる環化反応
 両末端にアリル基を有するブロック共重合体をGrubbs触媒存在下、塩化メチレン中で96時間反応させることにより、環状ブロック共重合体の合成を行った。1H NMRスペクトルにおいて、末端アリル基のシグナルが消失し、内部オレフィン由来のシグナルが現れたことから環化反応の進行を確認した。GPCにおいて、ピークトップ分子量Mp=6700 (PDI=1.09)と求まり、流体力学的体積の減少が確認されたことから、環状高分子の生成と矛盾しない結果となった。以上より原子移動ラジカル重合およびアリル化反応、それに続く閉環メタセシス反応により効率的に両親媒性環状ブロック共重合体が得られることが明らかとなった。

図1

 

 

 

 

図2
〔結論と今後の課題〕

高分子の一次構造はその特性に直接反映されるため、一次構造制御は次世代の科学技術を支えるボトムアップ型ナノテクノロジーにおけるキーワードである。環状高分子の形による特性を利用した実用材料への応用には、まだ多くの課題が残されているが、今後、本研究で得られた材料の特性を解析することで、環状高分子のトポロジー効果を明らかにすることができる。これはトポロジー効果を利用した新たな機能性ナノ材料へと導くものであると考えている。

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